海岸湿地の浸食で年66万トンの炭素が海へ NASA支援研究が算出

海岸の湿地が削られると、そこにたまっていた炭素はどこへ行くのでしょうか。
NASAが支援した新しい研究では、米国の大西洋岸とメキシコ湾岸から、年約66万トンの炭素が海へ運ばれると推計されました。
研究は査読を経て、2026年8月13日に学術誌『Communications Earth & Environment』で早期公開されました。NASAも8月24日付で内容を紹介しています。
ここでいう66万トンは、大気へ出た二酸化炭素の量ではありません。湿地の土に含まれていた炭素が、浸食によって陸から海へ移る量です。
年66万トン、ただし「CO2排出量」ではない
研究チームが見積もった年66万トンは、推計の中心となる値です。
推計誤差を踏まえた68%信頼区間は、年46万〜91万トン。数字には大きな幅があります。
一方、新しく形成された湿地に埋没・蓄積される炭素は年22万トンで、68%信頼区間は年9万〜59万トンと推計されました。
研究チームは両方の不確かさを計算に入れた統計モデルから、正味量の中央値を年38万トンと見積もっています。
ただし、この正味量の68%信頼区間は約マイナス1万〜75万トンで、ゼロをまたぎます。「必ず年38万トンが海へ出る」と断定できる精度ではありません。
この38万トンは、66万トンから22万トンを単純に引いた結果ではありません。統計モデルから求めた推計値で、二酸化炭素の排出量を表す数字でもありません。
どうやって調べた? 衛星とレーザー測量を活用
研究では、Landsat衛星の画像から1985〜2022年の湿地の変化を追いました。
さらに、米国地質調査所(USGS)のLiDAR標高データを組み合わせています。LiDARはレーザー光で地表の高さを測る技術です。
これにより、湿地が失われた面積だけでなく、削られた土の深さも見積もりました。
対象は米国の大西洋岸とメキシコ湾岸です。浸食の進み方には地域や時期による大きな差があり、ミシシッピ川デルタでは大型ハリケーン後に浸食が増えたことも確認されました。
「ためる量」だけでは分からない
海岸や海の生態系が取り込み、蓄える炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれます。
今回の研究が注目したのは、湿地が新たに炭素をためる量だけではありません。岸が削られ、すでに土にあった炭素が海へ持ち出される量も、炭素収支に入れる必要があると示しました。
ただし、海へ移った炭素のすべてが、すぐに大気へ出るわけではありません。
今回の数値は沿岸の炭素の流れを知る材料です。温室効果ガスの排出量へ、そのまま置き換えることはできません。
数字にはどのくらい幅がある?
正味の量を特に左右するのは、新しく形成された湿地に埋没・蓄積される炭素量の不確かさです。
また、削られた土の深さは5つの代表地点で調べ、その結果を広い地域へ当てはめています。
このため、正味年38万トンは幅を持つ推計として読む必要があります。
論文は査読・受理済みで引用できますが、最終版の編集前に公開された早期版です。今後、本文の表現などが修正される可能性があります。
参考・出典
NASA Science「NASA-Supported Study Tracks Carbon Cost of Coastal Erosion」
Communications Earth & Environment掲載論文
https://doi.org/10.1038/s43247-026-03911-3
NASA GISS論文情報
https://www.giss.nasa.gov/pubs/abs/di00300e.html
トップ画像の原典(NASA Photo ID: STS51C-143-27)
https://eol.jsc.nasa.gov/SearchPhotos/photo.pl?frame=27&mission=STS51C&roll=143
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トップ画像: Image courtesy of the Earth Science and Remote Sensing Unit, NASA Johnson Space Center. NASA Photo ID: STS51C-143-27. Source: eol.jsc.nasa.gov
1985年1月にスペースシャトルの宇宙飛行士が撮影したミシシッピ川デルタです。NASA Science掲載の1280×1007ピクセル版は原版から回転済みで、この記事では追加のトリミングや色調補正を行いません。
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