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【ショートショート】「ねえ、どうか、私を忘れないで」

江戸時代ぐらいの日本をイメージに書いたショートショートです。青年と少女の話。

6件の記事

 数日前のことだ。いつものように俺のところに来て、器用に繕い物をしながら小娘は言った。

「ねえ、私、今度殺されるの」

 殺される、の意味が分からなくて、俺は少し考えた。それで、初めて小娘と話した時のことを思い出して、勢いよく小娘の方を見た。

 小娘は、いつも通りの、何も楽しくない、と言わんばかりの表情で続けた。

「多分、もうこうしてお兄さんと話せることもないと思うから」

「なんで」

「なんで、って。だって、も...

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 こいつは、自分が生贄にされるって、もう気付いているんだとその時分かった。たかが十のガキなのに。

「それに、私は余所者だから。ここで信じてる神様なんて、どうでもいいの」

なんでもないように続けたそいつは、俺の目を見て言った。

「お兄さんも、私と同じ、冷めた目をしてるから分かった」

「……何言ってんだか、この小娘が」

 俺は、なんでもないようにそう言って突き放したつもりだった。けれどそれ以降、小娘は何かと理由...

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 今年は去年よりも米も野菜も取れない、どうしたもんか、なんて、やっと大人になった同世代の連中と話していたら、そのうちの一人が言った。水神様がお怒りなんだ、と。俺は、それに内心うんざりしながら相槌を打った。

 俺は、神だなんて、馬鹿らしいと思っていた。何かきっかけがあったわけでもないけれど、でも物心ついた頃にはそう思っていたから、つまるところ俺は根っからの捻くれ者なんだろう。けれど、それについて口にす...

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 大人達が話していたのは、その家の今後の扱いについてだった。女は体が弱い、自分で食い扶持を稼ぐこともできないんだから、さっさと追い出してしまったらどうだ、とか。娘の方はどうする、とか。それを聞いた俺は、あああいつら追い出されるのか、なんて他人事みたいに思っていたっけ。

 けれど、その後話の流れが変わったのが分かった。

 だが、あの器量の良い女を手放すのは惜しくないか、と一人が言った。

 旦那が死んだんだ...

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 その家は、余所者の家、とよく言われている家だった。なんでも、一組の男女が、俺が生まれてくる少し前にこの村にやって来たらしい。男の方は体格が良く力仕事が得意で、けれど力加減がへたくそ。そして女の方はどうにも体が強いほうではないらしく、けれど美人で手先が器用。そんな対照的な二人だった。今思えば、当時は村に人が少なかったから、少しでも労働力が欲しくて迎え入れたんだろう、と想像がつく。

 そうして、その男...

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 年の割に大人びた様子で淡々と告げた生意気な小娘は、笑顔で崖下へ飛び降りていった。



 そいつのことをきちんと認知したのは、俺が十の時だった。当時はまだガキだったから、大人達の話に混じれなくて悔しかったのを覚えている。その悔しさからか、俺はよく夜に大人達が酒を飲みながら話す声を盗み聞きすることが多かった。娯楽の少ないこの村の中で、それは俺の数少ない楽しみの一つでもあった。今思い返しても捻くれたガキだと...



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