【ショートショート】難攻不落⑨
くるりと自宅の方へ向き直って、ぼんやり考えながら帰路に就く。
あいつ、結局何に怒ってたのか分かんなかったな、とか。あいつがああやって声を荒げるのは珍しいことだな、とか。
そんなことを眠気の大分回った頭で考えていると、気付けばもう自室の目の前だった。ガチャリと扉を開けて、抱えていた荷物を机に置いてベッドに転がる。
そう言えば、まだあの布袋の中身確認してなかったな。思って、ベッドから手だけ伸ばして机の上の布袋に手を伸ばす。
紐で縛られた口を開けば、中には俺の好物であるりんごが二つ入っていた。それと一緒に、紙切れが一つ。瞼が落ちかける中、その紙に書いてある文字を読んだ。
『きちんと休養を取ること。
訓練は全力で挑むこと。
座学のテストが無いからって勉強をサボらないこと。
たまには、息抜きもすること』
「……いや、なげえわ」
すっかり見慣れた、読みやすいその文字。あいつはなんだかんだ言いながら、俺が座学で行き詰っているとこうやって考え方や覚え方のヒントなんかを教えてくれたものだ。
訓練生時代のその記憶が蘇ってきて、小さく笑う。そこで、俺の意識は夢の世界へと旅立った。





