
夜の見回りが終わって、今日の当番のやつに変わってから歩く朝の町。普段は心地よく感じる朝日が、澄んだ空気が、夜番が明けた後だけは酷く鬱陶しく感じる。
朝日に眼を眇めながら自宅へ向かって町を歩く中、唐突に背後から声を掛けられた。
「ねえ、お兄さん?これから、私とどうかしら?」
もう朝だぞ。内心でそう毒づいて、向こうにとって色好くない返事を返すために足を止める。……いや、そもそも俺がこの女の相手してやる義...
「うふふ、つれないのねえ。でも、そういうところも素敵よ?」
まるで暖簾に腕押しだ。無理やり振り払ってもいいが、それで怪我でもされたら加害者はこっちになる。ましてや女の言う通り、俺は兵士だ、下手すりゃ号外のネタである。
はあ、とまたため息を一つ。
「俺はお前みたいな軽い女は嫌いなんだ」
これでどっか行ってくれねえかなと、厳しい目つきで女を睨んだ。どうだ、夜番明けってこともあって中々迫力あると思うんだが...
ほぼ反射で頭を下げた。
俺の動きに付いてこれなかった女が、振り払われる形になって地面に転がる。それを視界の端で捉えるのと同時に、下げた頭の上で空を切る音が聞こえた。
低い姿勢のまま、その攻撃を仕掛けてきたやつを見据えるべく振り返る。そこには、予想通り俺の良く知る同期の女が、蹴りの姿勢を保ったまま居た。
「おい、どういうつもりだ?」
さっき女に対して作ったそれよりも、ずっと低い声が出た。自分でそれに...
女も俺と同じように思ったようで、怪訝そうな顔をして「はぁ?」と同期を見た。……しかし、女って怖えな。さっきはあんな猫撫で声だったのに。すっかり蚊帳の外になってしまった俺が二人のやり取りを傍観していれば、同期がにっこりと微笑みを作って口を開いた。うわ、余所行きの面だよあれ。気色わりい。
「貴女、恐らく先の戦に乗じてこの国に入ってきた方でしょう?そんな貴女が自分からこの国の兵士に手を出すわけがないじゃ...