【ショートショート】難攻不落④

ことことことこと2022年4月1日

 女も俺と同じように思ったようで、怪訝そうな顔をして「はぁ?」と同期を見た。……しかし、女って怖えな。さっきはあんな猫撫で声だったのに。すっかり蚊帳の外になってしまった俺が二人のやり取りを傍観していれば、同期がにっこりと微笑みを作って口を開いた。うわ、余所行きの面だよあれ。気色わりい。


「貴女、恐らく先の戦に乗じてこの国に入ってきた方でしょう?そんな貴女が自分からこの国の兵士に手を出すわけがないじゃないですか、ねえ?」


 同期の言った内容に、ぎょっとして女を見る。先の戦に乗じて、ということは、隣国である貧しいあの国から違法入国してきたということだ。確かに、この間の会議で違法入国者が多くいることを上層部で問題視している、みたいなことを上官が言っていた。


「身分を隠さねばいけない立場である貴方が、いくら馬鹿とは言え兵士であるそこの男とお楽しみだったとはとても考えられません。ということは、馬鹿の方から貴方に声をかけたと言うことじゃあないですか」

「おい、馬鹿馬鹿言い過ぎだぞお前。確かに座学じゃお前に負けてはいたが、それでも俺の成績は上から数えた方が早いんだからな」

「ねえ?お嬢さん」

「おい無視か」

ことこと
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