【ショートショート】「ねえ、どうか、私を忘れないで」⑤
こいつは、自分が生贄にされるって、もう気付いているんだとその時分かった。たかが十のガキなのに。
「それに、私は余所者だから。ここで信じてる神様なんて、どうでもいいの」
なんでもないように続けたそいつは、俺の目を見て言った。
「お兄さんも、私と同じ、冷めた目をしてるから分かった」
「……何言ってんだか、この小娘が」
俺は、なんでもないようにそう言って突き放したつもりだった。けれどそれ以降、小娘は何かと理由を付けて俺のところに来ては、「お兄さん」と俺を呼ぶようになった。勘弁してくれ、俺まで村の連中に変な目で見られるだろ、と思ったけれど、長年視界の端で捉え続けたそいつが自分から俺のところに来るのは気分が良かった。
「小娘」「お兄さん」と呼び合うようになったのは、俺が十五、あいつが十の時。今から二年前だった。
それから二年は、認めたくないが小娘のおかげで楽しかった。小娘は年の割に大人びていて、そして賢かった。同世代の村の連中と話すよりもずっと楽しかった。
だから、馬鹿な俺は忘れていた。ここ数年、野菜も米も中々取れない状況が続いていることも、小娘が余所者の家の娘だってことも。





