【ショートショート】「ねえ、どうか、私を忘れないで」②
その家は、余所者の家、とよく言われている家だった。なんでも、一組の男女が、俺が生まれてくる少し前にこの村にやって来たらしい。男の方は体格が良く力仕事が得意で、けれど力加減がへたくそ。そして女の方はどうにも体が強いほうではないらしく、けれど美人で手先が器用。そんな対照的な二人だった。今思えば、当時は村に人が少なかったから、少しでも労働力が欲しくて迎え入れたんだろう、と想像がつく。
そうして、その男女は表面上はこの村の一員として過ごすことになった。
そんな家に、数年前に娘が生まれた。目つきは父親に、それ以外は母親によく似た顔の、あまり表情の変わらないその子供は、両親と同じく表面上はこの村の一員として育っていた。
それから時間が経って、その娘が五つになる頃、父親の男は病で死んだ。それは、村の一番長生きの婆さんが見ても何の病だか分からなくて、結局父親の男は少しずつ衰弱して死んでいったらしい。葬式の時にちらりと遺体を見たが、あんなに体格が良くて力仕事が得意だったあの人の面影はなかった。




