路面電車

wannkowannko2022年3月6日


子供の頃、路面電車に乗ってゆらゆらと揺れながら学校に通っていた。


時間帯的に少し早めに出ていてたので、いつも席に座ってぼんやりと本をやりながら、飽きたら車内の景色を眺める、というのを繰り返していた。


いろんな人がいた。

スーツ姿のうつらうつらとした中年のサラリーマン。

楽しそうに親と初めての通園だろうか、をしている様子の幼稚園生とその親。

どこに行くという予定も分からず、ぼんやりと窓の外の風景を眺める人。


色々な人がいた。

いろんな物語がその場所には存在していた。


そんな僕も高校を卒業し、大学生となり田舎のこの街を出た。

久しく帰ってきてみれば、一つの垂れ幕が目に入る。


「◯◯線今までありがとう」


ああ、あの路面電車もいよいよ物語を終えるのだろうか。

僕はふと、電車の片道の安い切符を買い路面電車に乗った。


ちょうどその列車内には誰もおらず、

一人老人の運転手が「出発」と声を上げる。


かたん、ことん。

電車はゆったりと線路の上を走っていく。


僕はふと、「この電車はどこへいくのですか」と老人の運転手に声をかける。


運転手はしゃがれた声で「なぁに、博物館に行くんだってさ」


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しがない小説書き。SSなどを中心に投稿しております。