路面電車

子供の頃、路面電車に乗ってゆらゆらと揺れながら学校に通っていた。
時間帯的に少し早めに出ていてたので、いつも席に座ってぼんやりと本をやりながら、飽きたら車内の景色を眺める、というのを繰り返していた。
いろんな人がいた。
スーツ姿のうつらうつらとした中年のサラリーマン。
楽しそうに親と初めての通園だろうか、をしている様子の幼稚園生とその親。
どこに行くという予定も分からず、ぼんやりと窓の外の風景を眺める人。
色々な人がいた。
いろんな物語がその場所には存在していた。
そんな僕も高校を卒業し、大学生となり田舎のこの街を出た。
久しく帰ってきてみれば、一つの垂れ幕が目に入る。
「◯◯線今までありがとう」
ああ、あの路面電車もいよいよ物語を終えるのだろうか。
僕はふと、電車の片道の安い切符を買い路面電車に乗った。
ちょうどその列車内には誰もおらず、
一人老人の運転手が「出発」と声を上げる。
かたん、ことん。
電車はゆったりと線路の上を走っていく。
僕はふと、「この電車はどこへいくのですか」と老人の運転手に声をかける。
運転手はしゃがれた声で「なぁに、博物館に行くんだってさ」
