2分間小説『青い空』

国語の授業中、教師が、黒板に書かれた短歌を読み上げた。
「白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ」
「これは、明治時代の歌人である若山牧水が詠んだ、彼の代表的な短歌です」
すると、ひとりの生徒が質問した。
「どういう意味なんですか?」
「空の青色にも、海の青色に染まらない白鳥は、なんと哀しいのだろう、という意味です。世の中に染まることのない清純な魂を、白鳥に喩えた、と解釈されています」
教師の説明に納得できなかったのか、先程質問した生徒が、不満そうに続けた。
「だから、その『空の青』とか『海の青』っていうところの意味が、全然分からないんです。だって、空と海って、全然青くないじゃないですか」
そう言って彼は、教室の窓から、外の情景を見渡した。それにつられて、クラスメイトや先生も外を見渡す。それらは、さも自然な行為に見えた。
二一××年の日本――。
産業の発達に伴う汚染と兵器の使用により、地球の環境は一変し、空も海も、血で染められたような「赤」に染まっていた――。





