短編小説『心の中』 第9話

「問題文に不備があったとはいえ、なんだ、この解答は?作者・石川啄木(本名・石川ハジメ)の心情はよく書けているけど…書きすぎだ」
渡部には、書かれた内容についてどこまで本当で、どこまで正確なのかはわからなかった。しかし、国語教師として、常識的に知っている知識を照らすと「よく啄木のことを知っている」と思えた。ある意味、渡部は生徒の解答に感心した。だが、同時に。生徒に申し訳なく思った。それというのも、その生徒はこの問題にかかりきりになったからか、それ以降の問題に手を付けられず、他の解答欄がすべて空白になっていたからだ。あまりにももったいない。他の部分でテストの点を取れたはずなのに。なぜこの生徒は小説にしてしまったのだろう。「私には、君の答えが重荷だよ…」渡部は、頭を抱えた。この問題の配点は十点。渡部は生徒に同情し、おまけで十二点をつけた。だが、しょせんこの国語のテストでの得点は十二点のみで、落第点。残念ながら、この生徒は補習を受けることになるだろう。