短編小説『心の中』 第6話

親には『新聞記者』になったと言ったが、実際は、新聞社で働いてはいたが、記者ではなかった。せっかく職を得られたのだから、真面目に働けばいいものを、やはり僕はクズだった。朝は起きていられず、遅刻ばかりしていた。朝起きられないのは、夜遅くまで卑猥な本を読みふけっていたからだ。仮病で仕事を休むこともたびたびあった。
故郷から遠く離れているのをいいことに、新聞記者として、そして作家としても活躍しているようなふりをしながら、実際には、たいした仕事をしているわけでもなく、実にだらしない生活を送っていたのである。
「本当の姿を見たら、母さんはなんと言うか…」
そんなことを思っていた矢先、妻と母が上京してくることになった。僕は、みすぼらしい賃貸の一室を間借りして住んでいた。母がそれを見たら、どう思うだろうか。心配した。だが、やってきた母は予想外にもこういった。
「すっかり立派になって…」
そして、屈託なく微笑んだ。妻が買い物に出て、部屋に母と二人だけになると、なんとなく気まずい雰囲気が流れた。僕はたまらず、なぜそんなことを言ったのかわからないが、こういった。
「母さん、おんぶしてもいい?」