短編小説『心の中』 第5話

「しかたない。手ぶらで帰ろう。でも、どんな顔をして式に出ればいいのか?神童の僕が、故郷の人々の前で、本当の姿をさらけ出せるだろうか。僕はいい。でも、両親に恥をかかせることになってしまう…」
結局、僕は、多忙を理由に、自分の結婚式を欠席した。自分の結婚式をサボる。こんなクズはこの世のどこにもいないだろう。いや、いる。ここにいる。僕だ。それからの僕は、なんとか生計を立てるため、小説を売り込んだりしたが、上手くはいかなかった。生活はいつも逼迫していた。たまらず、友達にお金をせびった。
「少しでいいから、貸してくれないか?」
「お前の本が売れたら、倍にして返してくれよ」
僕の苦労を知る友達が、あるだけの金を貸してくれた。でも、つくづく自分がクズだと思うのは、そのお金のほとんどを遊びに使ったことだ。夜の街にくりだしては、若い女性と遊ぶのに費やしてしまったのである。僕は、自分を助けてくれた友達を裏切ってしまったのだ。一方で、就職活動の結果、僕はなんとか新聞社に職を得ることができた。