彼女は家にほぼ軟禁状態となり、なんとか高卒の肩書は得たものの、名家の令嬢とは思えないような生活を強いられていた。こっそり出かけようにも、常に見張りがいる。
「ほんと退屈。最悪だわ」
彼女の恨みは両親に、いや「家」に向かった。
「こんな家に生まれなければ!もっと普通の家が良かった!」
そう恨みを募らせる彼女の名前は、楠木ゆかり。そう言った。
ゆかりは、風の匂いで目を覚ました。どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。寝ていた場所が冷たいような気がして視線を落とすと、そこは草原であった。
一瞬、訳が分からなかった。しかし次の瞬間には、ああ、両親に捨てられたのだな、とゆかりは悟った。追い出したいならそうすればよいのに、こんなに何もない場所に財布すら持たせず捨てるとは、普通に犯罪ではないか、私は20歳にすらなっていないのに、と心の中でさんざんに両親をけなす。
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