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過去に書いた小説リメイク その7

家族が自分を遠くに捨てたわけではない。

ここは間違いなく私の家があった場所。

なら、どうして?

ゆかりには何が起こったのか全く理解できなかった。

自分の家どころか、近隣の家もない。

一瞬、爆弾でも落ちてここら一体が焼け野原になったのかと思った。

しかし、自分だけが助かったというのも、そんなことがあったのに目が覚めなかったというのも納得がいかない。

つまりこれは夢なのだ、とゆかりは長考の末に判断した。むしろ一番最初に夢だと思うべきだったのだ。捨てられたのだという思考が強すぎるあまり、一番可能性が高いことに頭が回らなかった。しかし、夢だと自覚している割にはあまりにもリアリティがありすぎやしないだろうか。

もちろん、あるはずのところに家がない、という事実自体には一ミリも現実味はないのだが、冷たい風や草の匂いはどうも夢の中のものだとは思えなかったのだ。

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