石に刻む
「ここになんて書いてあるかわかる?」
俺はふと友人に石碑を前にして聞いてみた。
ほんとはここには付き合いたての愛しの彼女、
ミカと来る予定だったのだ。
しかしミカは付き合って1週間にして、二股をかけていたことが発覚。
結局予約していた宿には「行きたかったし半額持ってやるから感謝しろ」と反応してきた友人と来ている。
俺の初彼女との夢のラブラブ旅行は男二人の友人同士のつるみへと即座に変貌したわけである。
友人は石碑をじっと見て、首を横に振る。
「うーん、わかんねーなー」と返した。
「そもそも何で石に削ったんだろうな」
「この時代には筆記用具がなかったんじゃねーの?」
「いやー、筆とかあったっしょ。筆とか」
「だよなー。石にわざわざ削るとかダルすぎっしょ」
ゲラゲラ二人でくだらないことを言いながら笑い合う旅行は、なんだか心地よかった。
「お前の彼女?いや、元カノか!諸行を石に刻めば残せるかもよ?」
「ギャハハ!それはいいな!お前が言い出したんだからもちろん付き合うよな!」
「えー、やだよ!めんどくせぇな!」
二人の笑い声が山中に響き渡るのでありましたとさ。
