5分間小説『冷静な人』 第1話

さやかは、同じ部署で働く先輩であるコウジの、冷静沈着な姿に惹かれた。コウジの冷静さを「冷たい」と悪くとる人もいるが、サヤカにとっては「クールで格好いい」姿に映ったからだ。男にありがちな、つまらない見栄や慢心、そして、そこからくる偏見が、コウジにはない。男女の差によって差別することはないし、たとえ若い人の言うことでも、正しいと思ったことは素直に受け入れる。そんなところも、サヤカがコウジを意識するきっかけになった。
二人の交際は、サヤカの告白から始まった。サヤカから交際を申し込んで付き合いはじめても、コウジは、それまでと何ら変わりなく紳士的に振る舞ってくれた。年齢の上下や、どちらが先に好きになったことなんてことは関係なく、対等な付き合いをしてくれる。デート先に選ぶ場所やプレゼントにもセンスが光っている。とっくに恋に落ちてはいたが、サヤカは会うたび、コウジに新しく恋をするような気持ちになった。
交際が始まってから結婚するまでは、ほんの数か月だった。
「これ以上、長く交際しても、僕らの関係は変わらないよ。それなら結婚しよう」


