3分間小説:第10話『前世』

僕には、はっきりとした前世の記憶があった。前世の僕は、武家の次男で、好きな女性がいたのだが、身分の違いで結婚することはできなかった。生まれ変わった僕は、ずっと彼女を捜している。きっと彼女も同じ時代、同じ国に生まれ変わっているに違いない。根拠はないが、そう思えたのだ。ある日、僕はとうとう彼女を見つけた。顔は前世と違っていたけれど、一目で彼女と分かった。目の前に現れた僕を見て、彼女は驚いていた。彼女も、きっと前世の記憶を持っているのだろう。しかし、彼女は僕を見るなり、突然速足で逃げ出した。
「来ないで!」僕は慌てて彼女の腕をつかんだ。「待ってよ!僕のことを覚えていないのか?前世で、君と愛し合い、結婚の約束までした真也だよ。なぜ逃げるんだい!?」すると、彼女は何かに恐れるように、顔を引きつらせて、震える声で呟いた。「また、私の首を絞めて……殺すの?」彼女に言われて、僕ははっきりと思い出した。両親に結婚を反対されて「あの世で添い遂げよう」と言ったものの、心中を彼女に断られ、嫌がる彼女の首を絞めて殺し、無理心中した悲惨な結末を――。



