3分間小説:第9話『壺』

男が骨董屋で買ったのは、呪いの壺だった。殺したい相手の髪の毛を入れて家に置いておくだけで、相手を呪い殺すことができるという。相手の見えるところに飾っておけば、効果は高いというが、見るからに禍々しいこの壺を堂々と飾っておくわけにはいかない。男は、妻の髪の毛を入れた壺を、妻の目の届かない場所にしまっていた。しかし、三ヵ月経っても効果は現れない。「もし効果がでなかったら半額で引き取る」という店主の言葉を思い出し、男は壺を骨董屋に返品した。そして今、男は非常に複雑な思いを胸に抱えている。リビングの最も目に付くところに、あの「呪いの壺」が置かれているのだ。実は昨日、妻がこの壺を置いているのを見た。妻は、新婚当初によく見かけた幸せそうな笑顔で、鼻歌を歌いながら呪いの壺に花を挿していたのだ。だからこそ、男は尋ねた。
「その壺は、どうしたんだい?」
「どうもしていないわ。骨とう品屋さんで見かけたから、買ってみたくなったのよ」
妻は鼻歌交じりに答えた。夫は冷や汗をかきながら、妻に問う。
「その壺の効果は、あったかい?」と。

