3分間小説:第2話『真実の鏡』

「鏡よ、鏡」
その鏡は、真実だけを告げる魔法の鏡だった。
その鏡の持ち主である女性は、何度も鏡問い続ける。
「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」
『あなたさまでございます』
「鏡よ、鏡。世界で一番賢いのは誰?」
『あなたさまでございます』
「鏡よ、鏡。世界で一番愛されているのは誰?」
『あなたさまでございます』
「鏡よ、鏡。世界で一番心が美しいのは誰?」
『あなたさまでございます』
五年後。いつも通りのやり取りが交わされる。以前と比べると、女性は衰えた風貌になっていた。だが、鏡は真実しか口にしない。
「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」
『もちろん、あなたさまでございます』
「鏡よ、鏡。世界で一番優しいのは誰?」
『それも、あなたさまでございます』
「じゃあ、世界で一番歌が上手いのは誰?」
『それもあなたさまでございます』
何度も尋ねるが、答えはすべて同じだった。
「あなたって、自分がどれだけ残酷なことを言っているか分からないの?」
鏡は答えない。女性は最後に質問を投げた。
「…そう。鏡よ、鏡。世界で一番寂しいのは誰?」
『あなたさまでございます』
「そうよね。だって、この世界には誰もいないのだから」