皮質(4)

FJちゃんFJちゃん2022年3月8日

矢野悟は次の瞬間、前に止まる車に追突した。


中から人が降りて来て、ようやくはっと我に返る。

朝からずっと考え事をしていた。


「ちょっと!降りてきなさいよ。もぉこっちは急いでるのに」


中年の夫婦に幸い怪我はなかったものの

警察を呼ばれ、何度もすみませんと頭を下げ、平謝りをしている時も

頭の片隅では3歳になったばかりの娘の結衣のことを考えてしまう。


妻が置き手紙をして出て行ってから、

2ヶ月経つがまさかこんなに結衣に手がかかるとは思いもよらず

なぜもっと真剣に話しを訊いてやらなかったのか

自分を殴りたい気持ちになった。


「ご飯を食べさせるのに2時間もかかるの」


「保育園に迎えに行ってから車に乗せるまで30分かかるの」


「看護婦さんに怒られちゃった」


「腹が立って抓りたくなるときがある」と涙ながらに訴えていた時も

「大変だったな」「結佳はがんばってるよ」などと労いの言葉を

かけて、仕事も大変なのに理解ある良い夫だな、勝手に思い込んでいた。


それが今はどうだ?

結衣から逃げ出したくなっているのではないか。


もう限界だ。

結佳、戻ってきてくれ。


と思ったとき、水色の数えきれない粒が俺の前にすうと現れた。




FJちゃん
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FJちゃんです