
年の割に大人びた様子で淡々と告げた生意気な小娘は、笑顔で崖下へ飛び降りていった。
そいつのことをきちんと認知したのは、俺が十の時だった。当時はまだガキだったから、大人達の話に混じれなくて悔しかったのを覚えている。その悔しさからか、俺はよく夜に大人達が酒を飲みながら話す声を盗み聞きすることが多かった。娯楽の少ないこの村の中で、それは俺の数少ない楽しみの一つでもあった。今思い返しても捻くれたガキだと...
その家は、余所者の家、とよく言われている家だった。なんでも、一組の男女が、俺が生まれてくる少し前にこの村にやって来たらしい。男の方は体格が良く力仕事が得意で、けれど力加減がへたくそ。そして女の方はどうにも体が強いほうではないらしく、けれど美人で手先が器用。そんな対照的な二人だった。今思えば、当時は村に人が少なかったから、少しでも労働力が欲しくて迎え入れたんだろう、と想像がつく。
そうして、その男...
大人達が話していたのは、その家の今後の扱いについてだった。女は体が弱い、自分で食い扶持を稼ぐこともできないんだから、さっさと追い出してしまったらどうだ、とか。娘の方はどうする、とか。それを聞いた俺は、あああいつら追い出されるのか、なんて他人事みたいに思っていたっけ。
けれど、その後話の流れが変わったのが分かった。
だが、あの器量の良い女を手放すのは惜しくないか、と一人が言った。
旦那が死んだんだ...