【ショートショート】難攻不落⑧ことこと2022年4月1日「ちょ、お前!!」 走り去るその背中に声を投げるも、同期は振り返らなかった。「……なんなんだよ、一体」 思わず独り言ちて、ぼりぼりと頭を掻く。まあ、あいつの言う通り明日の午後から訓練がある。明日のためにも早く帰って、夜番明けの体を休ませるべきだ。……あいつの言う通りなのは、ちょっと癪だけど。 ……ていうか、そう。俺、今夜番明けなんだよな。 自覚した途端眠気が襲ってきて、ふぁあと欠伸が出た。#ショートショート #小説 #短編小説 #SSfavorite0chat_bubble_outline0shareカテゴリー【ショートショート】難攻不落0件の記事ことこと
【ショートショート】難攻不落⑩ はぁ、はぁと息が切れる。それに、ああまだまだ訓練不足だな、走り込みを増やした方がいいかもしれないなと考えた。 少しずつ走るスピードを緩めていって、最後には壁に寄りかかる形になって足を止める。ふう、と息を吐いて、ずるずる地面へしゃがみこんだ。 あいつが今日、夜番明けだとたまたま聞いて。久しぶりに会えるかな、とか、夜番明けなら好物でも差し入れてやろうかな、とか。 浮ついた気持ちであいつを探したら、な...詳細を見る
【ショートショート】難攻不落⑨ くるりと自宅の方へ向き直って、ぼんやり考えながら帰路に就く。 あいつ、結局何に怒ってたのか分かんなかったな、とか。あいつがああやって声を荒げるのは珍しいことだな、とか。 そんなことを眠気の大分回った頭で考えていると、気付けばもう自室の目の前だった。ガチャリと扉を開けて、抱えていた荷物を机に置いてベッドに転がる。 そう言えば、まだあの布袋の中身確認してなかったな。思って、ベッドから手だけ伸ばして机...詳細を見る
【ショートショート】難攻不落⑦ 考えるのが面倒になって、直接そうぶつければ同期が虚を突かれたような顔を作った。 こいつのこんな顔見るのは、なんだか久しぶりだ。普段の大人びた雰囲気が抜けて、同世代であることが分かるようになるこの表情。そもそも、隊が分かれてからは顔を合わせることも減ったんだったか。今更ながら、こいつとこうして話すのはいつぶりだろうと思った。「……別に、怒ってるわけじゃ」「いや、怒ってるだろ」「……」 追求してみれ...詳細を見る
【ショートショート】難攻不落⑥「おい、誰が優しいだ。体術訓練で何度お前に吹っ飛ばされたことか」「それはあんたが弱いからでしょ」 いつも通りの仏頂面に戻った同期が、いつも通りの口調で俺に向かって言った。それに、ピキリと青筋が立つのが分かる。「はぁ?つーかなんだよさっきの口調と顔。キッショ」「一応あれも一般市民だから。それに、あの手合いに穏便に帰ってもらうにはこれが一番と判断しただけよ」 いつも通りの、お高くとまったような口調と仕...詳細を見る
【ショートショート】難攻不落⑤ 同期は俺の方には目もくれず、相変わらずの余所行きの顔のままで言った。そして、再び地面に転がっていたままだった女へ手を伸ばす。 女は、不服そうな顔を作って同期の手を取った。立ち上がってから、これ見よがしに服の裾をパンパンと叩く。 目線が並んだ女二人は、片方は相手を睨んで、片方は相手へ微笑んでいた。それに、どうしてかうすら寒いものを感じて思わず後退する。なんだあれ、戦場よりおっかない空気があそこだけ...詳細を見る
【ショートショート】難攻不落④ 女も俺と同じように思ったようで、怪訝そうな顔をして「はぁ?」と同期を見た。……しかし、女って怖えな。さっきはあんな猫撫で声だったのに。すっかり蚊帳の外になってしまった俺が二人のやり取りを傍観していれば、同期がにっこりと微笑みを作って口を開いた。うわ、余所行きの面だよあれ。気色わりい。「貴女、恐らく先の戦に乗じてこの国に入ってきた方でしょう?そんな貴女が自分からこの国の兵士に手を出すわけがないじゃ...詳細を見る